宜保通信 -霊能の世界-

日本神話から紐解く「死後の世界」

霊能者が教える霊界こぼれ話 ①

死後の世界

私たちがその命を終える時、魂は肉体から切り離され、しかるべき場所へと向かいます。それが死者の世界、いわゆる「あの世」です。今でこそ、生者の世界と死者の世界は隔てられてしまっていますが、実はかつて、この世とあの世がつながっていたのです。その様子は、『日本書紀』や『古事記』でも神話として登場します。今回は、日本神話における死後の世界についてお話したいと思います。

イザナギとイザナミの物語<1>

私たちが今いるこの世界が誕生した天地開闢(てんちかいびゃく)の時、「神世七代」の神様の一部として、イザナギノミコトとイザナミノミコトも生まれました。2人は高天原の神様に命じられて、地上の世界を創り出します。やがて2人は地上へと降り立ち、そこで結婚の儀式を行い、夫婦となりました。その後、2人はどんどんたくさんの国を生み出し、イザナミはそれぞれの国を治める様々な神様を出産します。

ところが、火の神を産んだ時、イザナミは性器に大やけどを負いました。イザナギの懸命な看病もむなしく、イザナミは命を落としてしまいます。イザナギは、妻を殺した火の神を許すことができず、剣で切り殺してしまいました。そして、愛する妻を取り戻すために、イザナギはこの世とあの世の境である黄泉比良坂(よもつひらさか)へと向かいます。

イザナギとイザナミの物語<2>

あの世の扉の前で妻に呼びかけると、何とも悲しい声が返ってきます。イザナミは、あの世の食べ物を口にしてしまったために、元の世界には戻れないと言うのです。しかし、「愛する夫のため、あの世の神様にお願いをしてみます。それまでは、けして扉を開けぬように」と言うと、扉の前は静かになりました。イザナギはしばらく待っていましたが、イザナミからは何ら音沙汰がありません。そしてとうとう、我慢できなくなったイザナギは、あの世への扉を開けてしまうのです。

扉の向こうにいたのは、身体が朽ち果て、醜い姿をした妻でした。恥をかかされたと怒ったイザナミは、イザナギを殺そうとします。イザナギは必死に黄泉比良坂まで逃げましたが、それでも追ってこようとするイザナミを恐れ、あの世とこの世の境を大岩で塞いでしまいました。それ以来、あの世とこの世は永遠に行き来できなくなったのです。

あの世は穢れた世界?

以上のことからもわかる通り、イザナギが大岩で黄泉比良坂を塞いでしまう前までは、あの世へ自由に行き来できていたのです。しかし、イザナギはあの世で調理された食べ物を食べてしまったために、地上の世界へ戻れなくなってしまったのですね。あの世は、『日本書紀』においては「黄泉」、『古事記』では「黄泉の国」という名前で描かれます。黄泉は死神や悪霊もうようよしていたり、腐乱した死体で穢れていると言われており、生きた者が足を踏み入れるべき場所ではないことは明らかです。結果的に、行き来できなくなってよかったと言えるかもしれません。

余談ですが、イザナギが大岩で境界を塞いでしまった時、追いかけてきたイザナミは次のように叫びます。「これからはあなたの国の人を1日に1000人殺します」。それに対し、イザナギは「それなら、地上では1日に1500人ずつ子供が生まれるようにしよう」と答えます。それから、地上では亡くなる人よりも生まれる人の方が多くなり、どんどん人口が増えていったと伝えられています。

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